AnalogDiscoveryを試す/03-LCノッチ・フィルタ

AnalogDiscoveryを試す

2014/11/30からのアクセス回数 6609

完成しました!

LCバンドパス・フィルタ回路

特定の周波数成分を通すフィルターをバンドパス・フィルターを呼びます。

今回は、R(抵抗), L(コイル), C(コンデンサー)を使ったLCバンドパス・フィルタをAnalogDiscovery、 LTSpice、Sageを使って試してみましょう。

LTSpiceを使った周波数解析

LTSpiceを使って以下の様なLCバンドパス・フィルターの回路を作成します。 *1

モデルは、以下のファイルを使用しました。

LC_BPF_cir.png

AC解析を実行する

Runコマンド(回路図で右クリックしてRunを選択)を実行すると、以下の様な周波数特性が表示されます。 約15kHz当たりに中心周波数があります。

LC_BPF_Network.png

AnalogDiscoveryで測定してみる。

LCバンドパス・フィルターの回路を以下の様にブレッドボードに組み、AnalogDiscoveryと接続します。

LC_BPF_setting.png

接続は、以下の通りです。

AnalogDiscoveryブレッドボード
Orange: Scope Ch1+Vi
Orange/White: Scope Ch1-GND
Blue: Scope Ch2+Vo
Blue/White: Scope ch2-GND
Yellow: Wave Gen 1Vi

波形を測る

最初に中心周波数15.7kHzの方形波を入力したときの出力波形を見てみます。

少しずれていますが、方形波と同じ周波数の正弦波が出力されています。

th_LC_BPF_15.7KHz.jpg

周波数特性を測る

ネットワーク・アナライザを使って周波数特性を実測します。 LTSpiceのシミュレーションと同じ形の周波数特性が測定できました。

th_LC_BPF_network.jpg

Sageを使ってグラフを表示

Sageを使ってVoでの周波数特性を計算してみましょう。

ここで紹介するSageのノートは、以下のURLで公開しています。

今回は、伝達関数を連立方程式を使って求めます。

Vo点での電流は、以下の関係を持ちます。

$$ i_R = i_C + i_L $$

また、Voでの電圧は、コンデンサーもコイルも同じなので、以下の関係式が成り立ちます。

$$ L \frac{di_L}{dt} = \frac{1}{C} \int_{-\infty}^t i_C(\tau) d\tau $$

入力電圧Viは、抵抗に流れた電流\(i_R\)とコイルに流れた電流\( i_L \)を使って以下の様に表されます。

$$ R i_R + L \frac{di_L}{dt} = v_i(t) $$

これらの式を組み合わせると以下の連立方程式が成り立ちます。

$$ \left\{ \begin{eqnarray} i_R & = &i_C + i_L \\ L \frac{di_L}{dt} & = & \frac{1}{C} \int_{-\infty}^t i_C(\tau) d\tau \\ v_i(t) & = & R i_R + L \frac{i_L}{dt} \end{eqnarray} \right. $$

これをラプラス変換表を使って書き替えると以下の様になります。 *2

$$ \left\{ \begin{eqnarray} I_R & = & I_C + I_L \\ LsI_L & = & \frac{1}{Cs} I_C \\ V_i & = & R I_R + Ls I_L \end{eqnarray} \right. $$

1番目の式を使って2番目と3番目の式を書き替えると以下の様になります。

$$ \left\{ \begin{eqnarray} I_C & = & C L s^2 I_L \\ V_i & = & I_L \{ R(1 + C L s^2) + Ls \} \end{eqnarray} \right. $$

これから伝達関数Hは以下の様に求まります。 *3

$$ H = \frac{V_o}{V_i} = \frac{Ls}{RCLs^2 + Ls + R} $$

Sageで伝達関数をプロットする

上記の式から伝達関数を以下の様に定義します。

$$ H = \frac{V_o}{V_i} = \frac{Ls}{RCLs^2 + Ls + R} $$

以下の方法は、伝達関数Hの形が異なるだけで、他はAnalogDiscoveryを試す/02-CR微分回路と同じです。

Sageへの入力:

# 伝達関数から周波数特性を求める
(s, f,R,C,L) = var('s f R C L')

H = (L*s)/(R*C*L*s^2 + L*s + R) 

表示すると、 Sageへの入力:

show(H)

eq7.png

ラプラス変数sをjω、ω=2πfを代入すると、 Sageへの入力:

# s = jω, ω= 2πfを代入すると
H(f) = H.subs_expr(s == 2*i*pi*f)

db単位で表示するために、toDb関数を以下の様に定義します。

# 電気ではデジベルで表示するため、toDb関数を定義する
def toDb(v):
    return 20*log(abs(v), 10) 

振幅特性をプロットします。 Sageへの入力:

# 直接表示すると'unable to simplify to float approximation'のエラーがでるので、lambda式で回避した。

plot(lambda f: toDb(H(f, R=10*10^3, C=0.022*10^-6, L=4.7*10^-3)).n(), [f, 5*10^3, 100*10^3], scale="semilogx", figsize=(5, 3), plot_points=500) 

gain_BPF.png

位相特性は、定義から以下の様になります。

# 位相は以下の様になる
Phi(f) = arctan(imaginary(H(f))/real(H(f)))

位相を度で表示するために、toDeg関数を以下の様に定義します。

def toDeg(v):
    return v*180/pi 

位相特性をプロットすると以下の様になります。

Sageへの入力:

# プロットに結構時間がかかります(5分くらい)。
plot(lambda f: toDeg(Phi(f, R=10*10^3, C=0.022*10^-6, L=4.7*10^-3)).n(), [f, 5*10^3, 100*10^3], scale="semilogx", figsize=(5, 3), plot_points=300) 

phase_BPF.png

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*1 抵抗の値がノッチフィルターと異なり10KΩになっているで注意してください。
*2 ラプラス変換表は、AnalogDiscoveryを試す/01-CR積分回路を参照して下さい。
*3 ここで、\(V_o = V_L\)を使っています。

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