2014/04/27からのアクセス回数 5301 ここで紹介したSageワークシートは、以下のURLからダウンロードできます。 http://www15191ue.sakura.ne.jp:8000/home/pub/44/ また、私の公開しているSageのサーバ(http://www15191ue.sakura.ne.jp:8000/)にユーザIDを作成することで、ダウンロードしたワークシートを アップロードし、実行したり、変更していろいろ動きを試すことができます。 Sageでグラフを再現してみよう:データ解析のための統計モデリング入門第7章 †この企画は、雑誌や教科書にでているグラフをSageで再現し、 グラフの意味を理解すると共にSageの使い方をマスターすることを目的としています。 前回に続き、 データ解析のための統計モデリング入門 (以下、久保本と書きます) の第7章の例題をSageを使って再現してみます。 久保本もようやくテーマの個体差が大きい場合の例題に入りました。今回のグラフは図7.10です。以下に久保本から引用します。 数式処理システムSageのノートブックは、計算結果を表示するだけではなく、実際に動かすことができるのが大きな特徴です。 この機会にSageを分析に活用してみてはいかがでしょう。 前準備 †最初に必要なライブラリーやパッケージをロードしておきます。 sageへの入力: # Rの必要なライブラリ #r("install.packages('ggplot2')") r('library(ggplot2)') r('library(jsonlite)') # python用のパッケージ import pandas as pd import numpy as np import matplotlib.pyplot as plt from ggplot import * # statsmodelsを使ってglmを計算します import statsmodels.formula.api as smf import statsmodels.api as sm from scipy.stats.stats import pearsonr # RUtilにRとPandasのデータフレームを相互に変換する関数を追加 load(DATA + 'RUtil.py') 個体差の大きなデータ †7章の例題は、個体\(x_i\)で観測された以下のデータを含みます。
データの特徴と可視化 †いつもの通りデータを読み込み、その内容、統計情報をチェックします。 sageへの入力: # 7章のデータを読み込む d = pd.read_csv(DATA+'data.csv') d.head() N y x id 0 8 0 2 1 1 8 1 2 2 2 8 2 2 3 3 8 4 2 4 4 8 1 2 5 [5 rows x 4 columns] sageへの入力: d.describe() N y x id count 100 100.000000 100.000000 100.000000 mean 8 3.810000 4.000000 50.500000 std 0 3.070534 1.421338 29.011492 min 8 0.000000 2.000000 1.000000 25% 8 1.000000 3.000000 25.750000 50% 8 3.000000 4.000000 50.500000 75% 8 7.000000 5.000000 75.250000 max 8 8.000000 6.000000 100.000000 [8 rows x 4 columns] 同じ点に重なるデータの可視化 †プロットデータを見ると、とても100個のデータがあるようには見えません。 これは、種子数・葉数が整数で同じ点に複数のデータが重なっているからです。 sageへの入力: # python版のggplotでは、jitter ggplot(d, aes(x='x', y='y')) + geom_point() <ggplot: (39068529)> sageへの入力: ggsave('fig-7.2.png', dpi=50) Saving 11.0 x 8.0 in image. 残念ながら、python版のggplotでは同じ点を重ならないようにするjitter機能が使えないため、 Rのggplot2を使ってプロットしてみました。 これで、データのばらつきが正しく把握できました。 sageへの入力: # Rにdを渡す PandaDf2RDf(d, "d") sageへの入力: # jitterを使って同じポイントに重ならないようにする graph = preGraph("fig7.2-R.png") r('p <- ggplot(d, aes(x=x, y=y) )+ geom_point(position=position_jitter(width=.2, height=0), shape=21, size=2.5)') r('plot(p)') postGraph(graph) GLMを使った分析 †このデータを6章と同じようにGLMで分析してみます。 予測値は直線となっており、6章のようなロジスティック曲線にはなっていません。 sageへの入力: # 通常のGLMを使って解析 r('fit <- glm(cbind(y, N - y) ~ x , data=d, family=binomial)') r('summary(fit)') Call: glm(formula = cbind(y, N - y) ~ x, family = binomial, data = d) Deviance Residuals: Min 1Q Median 3Q Max -4.4736 -2.1182 -0.5505 2.3097 4.0966 Coefficients: Estimate Std. Error z value Pr(>|z|) (Intercept) -2.1487 0.2372 -9.057 <2e-16 *** x 0.5104 0.0556 9.179 <2e-16 *** --- Signif. codes: 0 '***' 0.001 '**' 0.01 '*' 0.05 '.' 0.1 ' ' 1 (Dispersion parameter for binomial family taken to be 1) Null deviance: 607.42 on 99 degrees of freedom Residual deviance: 513.84 on 98 degrees of freedom AIC: 649.61 Number of Fisher Scoring iterations: 4 sageへの入力: graph = preGraph("fig7.3-R.png") r('p <- ggplot(d, aes(x=x, y=y) )+ geom_point(position=position_jitter(width=.2, height=0), shape=21, size=2.5) + geom_line(aes(x=x, y=8*fit$fitted.values))') r('plot(p)') postGraph(graph) 久保本に従い、\(x_i = 4\)のデータを抽出し、そのヒストグラムとGLMから推定された 二項分布を表示してみましょう。 以下の様にPandasの抽出機能を使ってx=4のデータを取り出し、頻度を求めます。 これにロジスティック_logisticと二項分布_pの2つの関数を定義します。 sageへの入力: # x = 4の種子数の分布 tbl4 = d[d.x==4].groupby('y').size() tbl4_lst = zip(tbl4.index, tbl4.tolist()) print tbl4 y 0 3 1 1 2 4 3 2 4 1 5 1 6 2 7 3 8 3 dtype: int64 sageへの入力: # ロジスティック関数の定義 def _logistic(z): return 1/(1 + exp(-z)) sageへの入力: # 二項分布を定義 def _p(q, y, N): return binomial(N, y)*q^y*(1-q)^(N-y) GLMで求まったモデルを使って、x=4でのqの値をロジスティック関数から求めます。 x=4での種子数分布(青点)と推定された二項分布(_p関数の値)にデータ数(tbl4.sum()=20)を掛けた値が、 推定された種子数になります。 このグラフからは、推定された種子数は、観測された種子数を説明しているように思えません。 久保本の説明では、\(x_i = 4\)の生存種子数の平均と分散を求めてみると、平均4.05に対して、 分散は8.37と大きく、二項分布の分散\(N p (1-p)\)から期待される値\(8\times0.5\times(1-0.5)=2\)と 比べて4倍ほど大きな値となっています。久保本ではこの状態を「ばらつきが大きすぎる」過分散と呼んでいます。 sageへの入力: # x=4での生存確率qを求める q = _logistic(-2.15+0.51*4) print q 0.472527695655406 sageへの入力: # 図7.3(B)をプロット lst_plt = list_plot(tbl4_lst) prd_plt = list_plot([_p(q, y, 8)*tbl4.sum() for y in (0..8)], plotjoined=True, rgbcolor="red") (lst_plt + prd_plt).show(figsize=5) sageへの入力: # x = 4 の平均と分散を求める(平均に対して分散が大きいことが分かる) d4 = d[d.x==4] print d4.y.mean(), d4.y.var() 4.05 8.36578947368 sageへの入力: # 二項分布から期待されている分散は2なので、8.4はかなり大きい N = 8 vr = N*q*(1-q) print vr 1.99396217995198 一般化線形混合分布(GLMM)を使った分析 †個体差を考慮した分析手法として一般化線形混合分布(GLMM)が出てきます。 ここでは、個体\(i\)の個体差を\(r_i\)とし、以下の様なリンク関数を定義します。 $$ logit(q_i) = \beta_1 + \beta_2 x_i + r_i $$ ここで\(r_i\)をどのような分布にするかですが、久保本では平均0,分散\(s\)の正規分布と しています。(統計モデルとして便利だからと理由です) glmmMLを使った分析では、個体毎に異なる独立パラメータをclusterオプションで指定します。 ここでは、idが個体を識別する指標として使われています。 sageへの入力: #r("install.packages('glmmML')") r('library(glmmML)') [1] "glmmML" "jsonlite" "ggplot2" "stats" "graphics" "grDevices" "utils" "datasets" [9] "methods" "base" sageへの入力: # python版ではない、R一般線形混合モデルGLMMを使う # 個体差は、平均0の分散sの正規分布に従うと仮定して先の問題を扱う r('fit <- glmmML(cbind(y, N - y) ~ x, data = d, family = binomial, cluster = id)') Call: glmmML(formula = cbind(y, N - y) ~ x, family = binomial, data = d, cluster = id) coef se(coef) z Pr(>|z|) (Intercept) -4.190 0.8777 -4.774 1.81e-06 x 1.005 0.2075 4.843 1.28e-06 Scale parameter in mixing distribution: 2.408 gaussian Std. Error: 0.2202 LR p-value for H_0: sigma = 0: 2.136e-55 Residual deviance: 269.4 on 97 degrees of freedom AIC: 275.4 結果の可視化 †GLMとの違いは、分析結果から予測される二項分布を見ると明らかです。 GLMのようなfitted.valuesがGLMMにはないので、分析結果の二項分布をmyfuncで定義して、 stat_function使ってプロットしてみました。 きれいに二項分布が表示されました。(これが図7.10の(A)) sageへの入力: # 結果からロジスティック関数をmyfunc <- 1/(1 + exp(-(-4.190 + 1.005*z))*Nで定義 r('myfunc <- function(z) { 8*(1/(1 + exp(-(-4.190 + 1.005*z))))}') # 結果をプロット graph = preGraph("fig7.10-R.png") r('p <- ggplot(d, aes(x=x, y=y) )+ geom_point(position=position_jitter(width=.2, height=0), shape=21, size=2.5) + stat_function(fun=myfunc)') r('plot(p)') postGraph(graph) \(r_i\)の分布 †もう一つGLMMから求められた\(r_i\)の正規分布をプロットすると以下の様になります。
sageへの入力: # σ=2.4の正規分布 T = RealDistribution('gaussian', 2.4, seed=100) plot(lambda x : T.distribution_function(x), [x, -10, 10], figsize=5) GLMMから求められた尤度 †個体毎の尤度\(L_i\)は、以下の様に\(r_i\)を積分して求めることができます。 $$ L_i = \int_{-\infty}^{\infty} p(y_i | \beta_1, \beta_2, r_i) p(r_i | s) dr_i $$ GLMMの結果からqを求める関数_qを定義し、上記の積分をSageの数値積分を使って計算する関数_Liを以下の様に 作りました。rの積分範囲は、sの分布から-10から10としました。 チェックのために、久保本図7.8にあるx=4, r={-2.20, -0.60, 1.00, 2.60}のqの値と、 y={0, 4, 7}の尤度\(L_i\)を出力してみました。 最後に、Liに20(個体数)を掛けた分布をx=4のヒストグラムに重ね合わせてみました。 きれいに、図7.10(B)の通り、生存種子数を表現できているのが分かります。 このような積分を含む処理でも数式処理システムSageを使えば簡単に分析できるのが、 ご理解頂けたと思います。 sageへの入力: # 回帰分析の結果からqを求める def _q(x, r): return _logistic(-4.190 + 1.005*x + r) # 指定されたyの尤度を求める(上記分布から積分範囲は-10から10とした) def _Li(y): return numerical_integral(lambda r: _p(_q(4, r), y, 8)*T.distribution_function(r), -10, 10)[0] sageへの入力: _q(4, -2.2), _q(4, -0.6), _q(4, 1.0), _q(4, 2.6) (0.0854891394348065, 0.316479106263684, 0.696354929823834, 0.919086532784535) sageへの入力: _Li(0), _Li(4), _Li(7) (0.18814448426796998, 0.07913801041038665, 0.10840844640974827) sageへの入力: prd2_plt = list_plot([_Li(x)*20 for x in range(9)], plotjoined=True, rgbcolor="red") (lst_plt + prd2_plt).show(figsize=5) コメント †皆様のご意見、ご希望をお待ちしております。 Tweet |