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2010/11/13からのアクセス回数 7088

はじめに

CQ出版から発売された「ARMマイコンパーフェクト学習基板の使い方」は、様々な インタフェースを実験するための部品とCortex-M3を搭載したARM用学習基板で 著者も私の好きな桑野雅彦氏です。

しかし、Micro BASICを使った説明では、処理の流れが分かりにくく、ビット処理も 読みづらいものとなっています。

microBuilder.euが公開している CodeBase はLPC1343のオープンソースのライブラリです。

ここでは、ARMマイコンパーフェクト学習基板の例題をCodeBaseを使って書き直し、 Cライブラリを使った開発方法を紹介します。

MacOSでCの例題を動かす

私はMacOSで開発しているので、ARMマイコンパーフェクト学習基板のCの例題を MacOSで動かしてみることにしました。

最初に そんすけぶろぐ を参考に以下のようにしました。

GCCは、MacPortのarm-elf-gcc*1を使いました。

変更点は、

  • makefile
  • usbpwm_Debug.ld
  • src/subdir.mk

makefileの変更

8行以下に

ARM_GCC := arm-elf-gcc
ARM_SIZE := arm-elf-size
ARM_OBJCOPY := arm-elf-objcopy
CMSIS_LIB_DIR := ../../CMSISv1p30_LPC13xx/Debug
CMSIS_INC_DIR := ../../CMSISv1p30_LPC13xx/inc

を追加し、gcc, sizeの部分を以下のようにしまいした。

# GCCの部分
	$(ARM_GCC) -nostdlib -L$(CMSIS_LIB_DIR) -Xlinker --gc-sections -Xlinker -Map=USBPWM.map  \
	-mcpu=cortex-m3 -mthumb -T "usbpwm_Debug.ld" -o "USBPWM.axf" $(OBJS) $(USER_OBJS) $(LIBS)
# SIZEの部分
	-$(ARM_SIZE) USBPWM.axf;  $(ARM_OBJCOPY) -O binary USBPWM.axf USBPWM.bin

他は、そんすけぶろぐの処理と同じです。

binの処理

makeで作成されたバイナリファイルは、そのままでは動作しないため、CodeBaseに含まれるlpcrc を使ってチェックサムをバイナリファイルにセットします。

また、パーフェクト学習基板基板への書き込みの際、Finderを使ってコピーすると隠れたゴミファイルが 作成されるため、ターミナルを使って以下のように行いました。

$ make
$ lpcrc USBPWM.bin
# ここで、基板のスイッチを2,3pinをショートし、Macに挿入します。
$ cp USBPWM.bin "/Volume/CRP DISABLD/"
$ sudo umount "/Volume/CRP DISABLD/"

この後、基板のスイッチを1,2pinをショートし、Macに挿入し直すと、LEDが点滅します。 これで、MacOS上で学習基板のプログラムが作成できることが確認できました。

CodeBaseのインストール

次にCodeBaseをインストールします。

CodeBaseのダウンロード

CodeBaseは以下のサイトからダウンロードします。

ダウンロードしたLPC1343_CodeBase_v0.50.zipを解凍し、適当なディレクトリに置きます (私は、~/local/arm/以下にセットしました)。

設定

設定する部分は、MakefileのCROSS_COMPILEの部分だけです。 MacPortのクロスコンパイラ用に

# CROSS_COMPILE = arm-none-eabi-
CROSS_COMPILE = arm-elf-

として、コンパイルしたところ、

/opt/local/lib/gcc/arm-elf/4.3.2/../../../../arm-elf/bin/ld: ERROR: 
/opt/local/lib/gcc/arm-elf/4.3.2/../../../../arm-elf/lib/thumb/libc.a(lib_a-ctype_.o) uses hardware FP, 
whereas firmware.elf uses software FP

のエラーがでました。MacPortの作ったlib.aがハードのFloating Pointを使っているのに、firmware.elfがソフト ウェアのFloating Pointを使っているようです。MacPort arm-gccのVariantを見てもそれらしい設定がないので、 今回は、FYI氏ブログで使っている devkitARMのMac OS X版をダウンロードしました。

MakefileのCROSS_COMPILEの部分を以下のように変更し、

#CROSS_COMPILE = arm-none-eabi-
CROSS_COMPILE = arm-eabi-

今度は、正常にコンパイルができfirmware.binが作成されました。

GPIO出力

基板にLEDをセットし、LEDを点滅させる例題をCodeBaseで書いてみます。

基板のLEDは、GPIO0の7ビット目に接続されているので、LED点滅プログラムは次のようになります。

#include "core/cpu/cpu.h"
#include "core/gpio/gpio.h"
#include "core/systick/systick.h"


int main (void)
{
	// Initialise the cpu
	cpuInit();	
	// Initialise the systick timer with one tick every 10 millaseconds
	systickInit(10);
	gpioInit();
	// Set GPIO0.7 to output
	gpioSetDir(0, 7, gpioDirection_Output);
	// Disable the internal pullup/down resistor on P0.7
	gpioSetPullup(&IOCON_PIO0_7, gpioPullupMode_Inactive);
	
	while (1) {
		// Set GPIO0.7 high
		gpioSetValue(0, 7, 1);
		systickDelay(50);
		// Set GPIO0.7 low
		gpioSetValue(0, 7, 0);
		systickDelay(50);
	}
}

基本的に、cpuInit関数を呼んだ後は、使用する周辺装置の初期化関数を読み出します。 ここでは、

  • systickInit
  • gpioInit

を読んでいます。

次に、GPIOのレジスタの設定をします。

  • GPIO0の7bitを出力モードにする
  • プルアップ/ダウンの設定は無効にする

GPIOの値の設定は、gpioSetValue関数で行います。

  • gpioSetValue(0, 7, 1);でGPIO0の7bit目の値を1とする

となります。

GPIO入力

次にGPIOの入力のテストを基板付属のタッチセンサーを使って行います。 この基板を入手するまでタッチセンサー専用ICがあるとは知らなくて、便利なものが出てきなぁと思いました。

タッチセンサーを使用するには、 P4ピンソケットの

  • 3-4番ピン
  • 31-32番ピン(本の47ページの図6にはミスプリがあり、右から5列めが31-32番ピンです)

のジャンパをセットします。使用するGPIOは、GPIO2の4bit目で、本の説明通りプルダウンに設定します。

先のLEDの例と合わせて、タッチしたときにLEDが点灯するようにプログラムを作成しました。

#include "core/cpu/cpu.h"
#include "core/gpio/gpio.h"


int main (void)
{
	// Initialise the cpu
	cpuInit();	
	gpioInit();
	
	// Set GPIO0.7 to output
	gpioSetDir(0, 7, gpioDirection_Output);
	// Disable the internal pullup/down resistor on P0.7
	gpioSetPullup(&IOCON_PIO0_7, gpioPullupMode_Inactive);
	
	// Set GPIO2.4 to input
	gpioSetDir(2, 4, gpioDirection_Input);
	// Enable the pull-down resistor on GPIO2.4 
	gpioSetPullup (&IOCON_PIO2_4, gpioPullupMode_PullDown);
	
	while (1) {
		// Read the current state of GPIO2.4 (1 = high, 0 = low)
		if (gpioGetValue(2, 4) != 0) {
			// Set GPIO0.7 high
			gpioSetValue(0, 7, 1);
		}
		else {
			// Set GPIO0.7 low
			gpioSetValue(0, 7, 0);
		}
	}
}

どうでしょう、とても簡単にGPIOを使うことができると思いませんか。 CodeBaseはオープンソースなので、各関数のソースを読むことで処理内容を確認することができます。

USB接続時にシリアルデバイスにする方法

LPC1343には、USBコントローラが付属しており、USBシリアルとすることができます。

CodeBaseのUSB CDCを使ってPCとシリアル通信する例題を作ってみます。

ソースは以下の通りです。

#include "core/cpu/cpu.h"
#include "core/uart/uart.h"
#include "core/usbcdc/usb.h"
#include "core/usbcdc/usbcore.h"
#include "core/usbcdc/usbhw.h"
#include "core/usbcdc/cdcuser.h"

/* Systick Timer Settings */
// The number of milliseconds between each tick of the systick timer
#define CFG_SYSTICK_DELAY_IN_MS     (1)           
/* UART Settings */
#define CFG_UART_BAUDRATE           (57600)       // Default UART speed
// RX FIFO buffer size (the maximum number of received chars to store)
#define CFG_UART_BUFSIZE            (80)          

// loop until any key input.
void waitUntilAnyKeyInput() {	
	int numAvailByte = 0;
	do {
		CDC_OutBufAvailChar (&numAvailByte);
	} while(numAvailByte == 0);
}

int main (void)
{
	// Initialise the cpu
	cpuInit();	

	// Initialise UART with the default baud rate (set in projectconfig.h)
	uartInit(CFG_UART_BAUDRATE);

	// Initialise USB CDC
	CDC_Init();                   // Initialise VCOM
	USB_Init();                   // USB Initialization
	USB_Connect(TRUE);            // USB Connect
	while (!USB_Configuration);   // wait until USB is configured	
	
	waitUntilAnyKeyInput();
	
	printf("Hello world");
	
	while (1) ;
}

USBに接続するとすぐにプログラムを実行してしまうため、Mac側のターミナルから任意の文字を入力した タイミングでHello worldと出力することにしました。

文字列入力を待つ関数は、waitUntilAnyKeyInputです。

動作確認

基板を接続すると、「新しいネットワークインタフェースが検出されました。」のメッセージがでます。 キャンセルとし、ここでは設定はしません。

ターミナルで以下のようにデバイスを確認します。

$ ls /dev/cu.*
/dev/cu.Bluetooth-Modem		/dev/cu.Bluetooth-PDA-Sync	/dev/cu.usbmodem241321

と出力され、/dev/cu.usbmodem241321が新しいシリアルデバイスです。

起動方法が簡単なので、シリアル通信にはscreenコマンドを使用します。

$ screen /dev/cu.usbmodem241321
Hello world

screenコマンドを実行し、リターンキーを押すと「Hello world」と表示されます。 screenコマンドを終了するには、Ctrl-a Ctrl-kとし[Y/N]を確認してくるので、yを入力すれば終了します。

このUSBシリアル通信は、デバッグやPCからの制御でとても便利です。

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皆様のご意見、ご希望をお待ちしております。

  • lbed/08-ARM学習基板で実験では、リアルタイムクロックを含めすべての実験を試して見ました。 -- 竹本 浩? 2014-02-04 (火) 12:27:51

(Input image string)


*1 arm/開発環境のセットアップ参照

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Last-modified: 2018-07-26 (木) 20:47:51 (2100d)
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